釧路ロータリークラブ 国際ロータリー第2500地区 Rotary Club of Kushiro
通 算
3492
2017-2018年度
32回 例会報告
2018年03月01日
例 会 内 容
道東経済の現状と課題
〜日銀支店長講話〜
会長の時間
会長挨拶 邵 龍珍 会長
 皆さん、こんにちは。お食事の方、デザートの方、どうぞご継続なさってください。3月は、ロータリーで定める『水と衛生の月間』ということになって準備をしていましたけれど、今週に入ったら平昌オリンピックの話でテレビも紙面もメダリストの話で賑わっていたので、急遽、代えてオリンピックの話を少ししたいと思います。
 皆さんご存じのように平昌オリンピックは、長野を超えて過去最多のメダル数13個。金4・銀5・銅4ということでランキングは11位で、ちょっと上がらなかったですけれど、ちなみに1位はノルウェー、2位がドイツ、3位がスイスということでございました。
その後この1週間、「平昌オリンピックで感動したベスト5」というものがよく出ていましたけれど、やはり1位は羽生選手ですね。ケガの復帰から男子66年ぶりの2連覇ということで、また、経済効果がすごくてメチャクチャにグッズが売れているということです。また、仙台市ではパレードをするという企画を練って、その余剰金を今度アイススケートリンク施設の設備投資にするとも発表しているそうでございます。
 また、小平選手の金メダルと銀メダル、大変素晴らしかったです。また、宿敵韓国のイ・サンファ選手との国境を越えたスポーツの素晴らしい友情を見て感動をしたのは私だけではないと思っているところでございます。幕別の高木姉妹、姉妹でメダルを1大会で5個。私が親だったらもう鼻が高いというよりも、タカタカタカタカとなっているような感じに思いますけれど。また、悲願の銅メダルをとった高梨沙羅選手、本当に8年間苦労した結果が良かったと思います。
 最後には、やはりいま今年の流行語になるのではないかと思いますけれど、「そだねー」の「そだねー ジャパン」です。カーリングのメンバー、LS北見・本橋マリリンが作ったクラブチームで、ここまで銅メダルがとれたということは大変素晴らしいと思います。
 このカーリングを少し調べたら、15世紀の発祥だそうです。北欧からスタートして、元々は川で底が平らな石を氷の上で投げて遊んでいたということが発祥ですけれど、その後、スコットランドが中心で発展して行って、いまのようなゲーム感覚になった一番古い記録が1541年2月ということで、大変歴史のあるスポーツだそうでございます。
 日本には、1900年代に普及して来たのですけれど、なかなか競技の関係上、設備等がありまして試合すらできなかったということと、他の競技に比べたら人気がなくなかなか普及仕切れなかったのですが、北海道常呂町の人達が頑張ってそういった選手を育て今回の銅メダルに至ったということでございます。
 38年前から、ストーンは1個20万円位するらしいですけれど、これがないのでガスボンベを工夫してストーン代わりに使ったり、あとは、われわれが商売で使っているビールタンクですね。10?ビールタンクの上に棒を刺してストーン代わりに使ったその歴史、先人達の努力によっていまの常呂町のカーリングブームがあるということでございます。
 また、26年前からは、常呂町の小学校で体育授業にカーリングを導入していますので、日本の3,000人のカーリング人口の大半が常呂町の人ということですが、その意味も分かるかなということでございます。
 また、いまカーリングは北見の街おこしにすごい貢献をしているということでございます。オリンピック以降はふるさと納税、その電話が止まないというぐらいにすごく貢献しています。10,000円を寄付しますと返礼品が「赤いサイロ」という選手達が休憩時間に食べていたチーズケーキですけれども、いま北見の店頭に行くと9か月待ちらしいのです。そのくらいまでものが売り切れ状態。ストーンのおみくじなど関連したグッズが全部売れて、大変北見は潤っているのではないかと思うところでございます。
われわれ氷都釧路もこれから、スポーツ業界の皆さん、そしてわれわれ経済人、ロータリアンが力を合わせて、いろいろなスポーツの大会、そして合宿誘致をしてこの地域のスポーツの発展、そしてこの地域の発展のために少しでも前に進んで行ければと思います。
当クラブの皆さんには、その先頭に立って頑張っていただきたいということをお願い申し上げまして本日の会長挨拶とさせていただきます。
このあともよろしくお願い申し上げます。
本日のプログラム
道東経済の現状と課題
〜日銀支店長講話〜
日本銀行 釧路支店 支店長 森 成城 会員
 皆様こんにちは。ただいまご紹介いただきました日本銀行釧路支店長の森でございます。皆様には、平素より日本銀行の様々な業務につきまして、ご支援とご協力を賜っております。この場をお借りして厚くお礼を申し上げます。どうもありがとうございます。
 年に一度このような機会をいただいておりまして、せっかくお話しをさせていただくのであれば、なるべく皆様に少しでも分かりやすく、そして少しは役に立つようなお話しをさせていただきたいと思っております。いまご紹介いただいたとおり、講演資料はなるべく自分で作るようにしておりまして、本日もギリギリまで作っておりましたので不備がないか若干心配です。それでは本題に早速、入らせていただきたいと思います。
基本的には、こちらのスクリーンをご覧いただければと思うのですが、ただ文字が小さく見えづらい所もあるかと思いましたので、お手元に紙も配布させていただきました。見えづらい所はそちらをご覧いただければと思っております。よろしくお願いいたします。
本日の話題は2つ、『日本経済の動向と課題』、そして2番目に『道東経済の現状と課題』でございます。最初に日本経済のお話しをさせていただこうと思ったのは、3つほど日本経済の最近の動向に特徴があると思ったことと、課題については、この北海道は課題先進地域と言える面もありますので、日本経済の課題を見れば道東経済の課題も結構明らかになるからです。やはり統計は日本全国の方が多いので、統計データもご覧いただいて課題を浮き彫りにしたいということから、最初に日本経済全体のお話しをさせていただきたいと思っております。
 それでは、1つ目の『日本経済の動向』でございます。3つ特徴があると申し上げましたが、最初に挙げる特徴は「非常に息の長い成長が続いている」ということでございます。グラフにございますとおり、1985年以降でいえば「バブル景気」「いざなみ景気」そして「今次局面」、まだ名前は付いていませんので「今次局面」と便宜上呼んでおります。実は、戦後最長の景気回復局面は「いざなみ景気」といわれる2002年2月から2008年2月まで73か月、6年強続いた景気回復が最長となっております。ただ、「今次局面」は、2012年12月ぐらいから始まったと言われていますので、現時点で既に6年経ちます。内閣府が学者先生を集めた委員会において「景気基準日付」というのが議論されて、正式にはこの回復局面の長さが決まるため、まだ正式ではないのですが、「今次局面」は恐らく戦後最長の回復局面になると思われます。
ただグラフをご覧いただくと、成長といっても傾斜の角度が全然違うことがお分かりいただけると思います。バブル景気のときには、日本の潜在成長率は大体4%台でしたけれども、今次局面はそれが大体1%弱と言われていますので、傾斜が緩やかということが残念なところでございます。
 次の特徴は、「バランスの良い成長」でございます。いま出てきた「バブル景気」「いざなみ景気」「今次局面」を並べて見ますと、成長に寄与しているものが大きく3つあります。「外需」、「公的需要」そして「民間国内需要」ということになります。バブル景気のときには、実は外需はマイナス要因でした。従って民間国内需要が非常に強かったということに加え、公的需要もプラスであったので、非常に高い成長を記録したということでございます。一方、いざなみ景気の方は、この時期は公共事業などを結構減らしましたので、公的需要はマイナス寄与だったのですけれども、民間国内需要と外需が強かったおかげで景気が回復しました。一方、「今次局面」は、「外需」「公的需要」「民間国内需要」のすべてがプラスに寄与しているということが特徴でございます。この事実をもって、バランスの良い成長と言うことが出来ます。
 3つ目の特徴は、今次局面は「企業規模・地域の広がり」があるということでございます。これは説明するのが少し複雑なのですけれども、日銀短観の「景況感」というものをグラフでご覧いただきます。短観調査で企業が、最近の景気は3か月前と比べて「良い」という先と「悪い」という先の数を調べ、その差を取ったものがプラスになれば、「良い」超ということで景気が改善していると判断されるのです。左側のグラフを見ていただくと、規模別で先ほど出てきた「いざなみ景気」という景気回復局面は、中小企業の場合はマイナス、つまり「悪い」超だったのです。従って、業況が良かった大企業に牽引されて景気が回復したとも言えます。一方、2016年以降をご覧いただくと、大企業、中堅企業、中小企業のすべてがプラス、すなわち中小企業も「良い」超になっているということで、すべての規模において、「良い」と言っている企業の数が上回っているのが特徴でございまして、すべての規模で幅広く景気が改善しているとみられている点が特徴です。
 それから、短観は、釧路支店も含む全国32都市にある日銀各支店による調査、そして日銀本店が集計する全国短観というものからなっておりまして、それぞれの調査結果、つまり各支店の短観によって「良い超」か「悪い超」か、そして「良い(悪い)超」の幅が異なります。「いざなみ景気」のときは、マイナス、つまり「悪い超」であった地域が結構たくさんありました。グラフでみると、この時期はシャドーで示した部分の幅が非常に広く、しかも、0より下、「悪い超」にもかかっているということですから、景気が悪い地域もあったということです。
これに対し、同じグラフの右側の最近のところをご覧いただくと、実はシャドーが0よりも上に位置するということは、すべての地域が「良い超」になっているということで、景気が改善しているという点であまり地域差がないということを意味しますので、企業規模・地域の広がりが今次景気回復局面の特徴であるということになります。これが3つ目の特徴でございます。
 そうした下で、企業収益の動向を次にご覧いただくと、中堅中小企業も含めて企業収益が過去最高水準にあるということでございます。こちらのグラフを過去に遡って見ていただくと、過去の景気回復局面では必ずしも中堅中小企業の収益はあまり大きく改善していなかったことが分かります。ただグラフの一番右側の最近の状況をご覧いただくとお分かりいただけるとおり、すべての規模の企業収益が過去最高圏にあるということが特徴でございます。従って、規模別で見て、先ほど述べたようにすべてにおいて「良い超」となっていることは、すべてにおいて企業収益も最高水準であることで、整合するような内容になっております。
 それからもう1つの特徴は、労働需給が着実に引き締まっているということでございます。例えば、失業率をご覧いただくと、大体いま2%台半ばという水準なのですが、その水準はバブル期が終わったあたり1993年〜94年頃と同水準になっております。従って非常に失業している方が少ないということがまず1つございます。また、グラフの有効求人倍率は求人数と求職数の比率で、いわば求人数が求職数を上回っていれば1倍を超える、要するに「働きたい」と言っている人以上の求人があるということになりますので、1倍を超えてくると大体その労働市場とは非常に引き締まってきます。これが1.55倍になっているということは、1974年1月の1.64倍以来の水準ですから、バブル期をさらに超えるような有効求人倍率となっていますので、労働需給が非常に引き締まっているということがいまの特徴でございます。
以上が日本経済の動向になりますが、続いて課題の方に移りたいと思います。
 やっぱり1つの大きな課題は、人手不足の問題ということになります。このグラフは、少し分かりづらいかもしれませんけれども、いわゆる「生産年齢人口」といわれるのが大体15歳〜64歳ということで、65歳以上となると「高齢者」と位置付けられているわけですが、2000年〜2017年の過去17〜18年の間にどれぐらい生産年齢人口の女性の働き手が増え、生産年齢人口の男性の方が減ったかを示しています。まず、生産年齢人口の男性をご覧いただくと、実はこの17〜18年間に男性は410万人も働き手の数が減っています。これは典型的に高齢化が進んだということにもなるわけですけれども、生産年齢を超えた人達が増えてきて、定年退職を迎えて働き手でなくなった方もいらっしゃったということでございます。ただ一方で、女性の方はこの同じ期間中に35万人増えています。左側のグラフ内で折れ線グラフは労働力率と書いてありますが、これが2000年に60%程度だったのが最近は70%近くまで上がっているということで、働き手として数えられる女性が非常に増えたということでございます。ただ、これでは410万人減ったのに対して35万人しか増えていませんので全然埋め合わせていないのですけれども、それを埋め合わせているのが実は高齢者ということになります。こちらは同じ期間中に325万人も増えていますので、高齢者になっても働いている方がいるおかげで、何とか労働力の供給面を支えていただいているということを意味しています。
 では、どれぐらい労働供給の余地がさらにあるのかという話になってきます。まず、こちらのグラフの見方は、濃い線の方が「潜在労働力人口」ということで、これは生産年齢人口にいらっしゃる方々がどれぐらいいるのかを示しています。薄い線の方が実際に働いている人の数、すなわち労働力人口となりますので、労働力人口を潜在労働力人口が上回るのであれば、まだ働く人の余地があるということになります。ただ、女性の方はその差がプラスで潜在労働力人口が上回っており、その差は大体170万人となります。男性の方をご覧いただくと、労働力人口の方が生産年齢の潜在労働力人口を上回っている。これはまさに先ほど申し上げた高齢者が頑張って働いているため、このようなことになっているので、いわば、まだ労働供給を増やす余地があるのは女性であると言えます。高齢者もさすがに歳を取ればいつか限界がきますので、女性の労働力率上昇に依存して行かないと今後の働き手を賄って行けないことがこちらのグラフから分かるということでございます。
労働力人口の減少は、重要な問題です。というのは、日本の「成長率」を「労働生産性の上昇率」と「就業者数の変化」とに分けることができるのですが、日本の経済成長率が傾向的に下がってきてしまった理由は、まさにこの就業者数の変化率が「0」あるいは「マイナス」に下がってきたことがあります。従って、労働生産性の方を上げて行かないと、もはやプラス成長を維持できなくなるのです。たとえば労働生産性が一定で上がらなければ、グラフにお示ししたとおり、我が国GDPはマイナス成長になる見通し、ということになってしまいます。では、経済全体の生産性を上げるために、どこで頑張らなければいけないかといえば、右側のグラフの点線をご覧になればわかるように、実は製造業はずっとその生産性を高めています。非製造業の方はそれに比べると伸び率も水準も低いので、雇用を製造業以上に吸収している非製造業において労働生産性を高めて行かないと日本の労働生産性ひいては経済成長率は上がらないことになりますので、これが1つの大きな課題、とくにプラス成長を維持するのであれば大きな課題となるわけでございます。
実際に最近、労働生産性向上に向けた企業の取り組みがいろいろと行われています。労働生産性とは、ザックリ言えば付加価値を分子、労働投入量を分母として、それらの割り算で計算されるので、分子の付加価値額を増やすか分母の労働投入量を減らすか、どちらかしかないわけでございます。
いま企業では、両方の取り組みが行われています。例えば、分子の付加価値額を増大させるために上に書いてありますとおり新たな商品・サービスをはじめ利益率の高い分野へのシフトが行われています。また、稼働率を引き上げるような努力が行われているということもございます。一方、労働投入量については、1つは、人の代わりに機械に頑張ってもらおうということで、省力化を可能にする投資により、例えば「IoT」や「人工知能」などの新技術を活用した各種設備の導入が行われてきているところでございます。
それからもう1つの取組みは、「ビジネスプロセスの見直し」と抽象的な言い方をしていますけれども、いわゆる過剰サービスの削減というか、例えば24時間営業をしていても夜中には全然お客が来ないので営業時間を短くするような例が1つです。付加価値額の増大に結びつきにくい業務の縮小・廃止をしているとか、あるいは最近「働き方改革」が言われていますけれども、従業員の働き方を見直して長時間労働を是正し、業績向上と両立させるというような動きがございます。それから、現場の経験に加えビッグデータなどを活用した業務効率化余地の把握・分析というものも行われているということです。
企業では実際にこのように生産性を引き上げる取り組みが行われているところでございます。
次にもう1つ別な角度から申し上げたかったことは、企業収益が先ほど過去最高水準にあると申し上げたのですけれども、実はそれに伴って企業の内部留保、すなわち利益剰余金や、その中の現預金が過去最高水準になってきています。
グラフでは、ピンクの線が現預金で黒い線が利益剰余金です。例えば、中堅中小企業で、特にこの利益剰余金(内部留保)が増えてきていることが最近の特徴でございます。これはウラを返せば、設備投資などの前向きな支出などをやや抑え目にしていると言えます。それに伴って、現預金が積み上がっています。実は、現預金の動向を企業規模別にみると、大企業の方は緩やかな増え方にしか過ぎないのですけれども、中堅中小の方は過去最高水準まで増えてきているという特徴がございます。例えば、M&Aなどをやりますと現預金ではなく投資有価証券になるので、恐らく大企業はM&Aなどをやることで現預金の増加が抑えられているとみられますが、中堅中小企業の方はそういう方法がなかなかなく、現預金が積み上がっているということになります。では、なぜ設備投資などの支出を抑制しているのかについては、次のページで1つの仮説をお示しします。
このページでは、「後継者不在、人手不足と事業継続への不安」ということを書かせていただいていますが、帝国データバンクのデータを使わせていただいています。例えば、一番左側のグラフは中小企業の経営者の年齢分布でして、ピンクの折れ線が一番最近のデータですけれども、どんどんと高齢化している傾向が見て取れると思います。この折れ線の真ん中あたりで、一番とがっているところが70歳代に近くなっています。それから、中央のグラフが後継者不在率を示しておりまして、こちらは「後継者がいない」とおっしゃっている企業はサービス業や建設業、あるいは不動産・小売・卸売といったまさに非製造業で雇用を一番生み出していただいている業種が「後継者不在」と言っていまして、後継者不在率は全体でも66.5%になっています。
さらに一番右側のグラフをご覧いただくと、7割以上の企業が「事業承継が経営上の最優先または非常に優先度の高い問題と認識している」とお答えになっているということで、後継者がいなくて、将来に事業を継続する自信が持てないために、支出を抑制しているという面があるのではないかと考えているところでございます。

以上が日本経済全体の話で、今度は道東経済の話に移りたいと思います。

まず、私ども日銀釧路支店は道東経済の「基調判断」というものをほぼ毎月出しておりまして、各需要項目すなわち公共投資、設備投資、住宅投資、個人消費のほか、生産や雇用で全体観を作っています。全体観については、景気は「水揚げ量の減少の影響等が一部にみられるものの、全体としては緩やかに持ち直している」としております。ただ昨年7月から11月の間は「持ち直している」と判断しておりまして、この判断を12月〜2月にかけて少しずつ引き下げて参りました。
判断を引き下げてきたのは、釧路・根室は主要産業の1つが水産、それから獲れた魚を原料とする水産加工業となりますので、昨年秋以降の記録的な不漁の影響ということで生産の判断を12月に引き下げました。さらに2月に、道東経済には十勝地区も入っていますので、台風の影響を非常に受けたこの地区で公共投資すなわち台風復旧工事が盛り上がったのが、大型の復旧工事が一巡したということで、2月に公共投資の判断を引き下げました。さらに住宅投資も、2015年の相続税増税以降に投資目的の貸家建設、つまりお金を借りて賃貸用のアパートを建てられる方が多かったので、それで住宅投資も盛り上がっていましたが、ここへきてさすがに空室が目立つようになったり、なかなか満室にならない。これを見て、金融機関もアパート建設資金の貸し出しに慎重になったということもあって、2月に住宅投資は「横這い圏内の動きとなっている」として、この2つの需要項目の判断を下げたため、全体観もそれまで「持ち直している」と言っていたのを2月に「緩やかに」という言葉を付けさせていただいたということでございます。ただ基本的には緩やかであっても改善基調が続いているのではないかと判断をしているところでございます。
次のグラフが参考までに、公共投資を公共工事請負金額で見てみましたけれども、2017年の初め頃にすごく盛り上がった時期がありまして、これは平成28年度の補正予算とゼロ国債分で災害復旧費が非常に多額に付きましたので盛り上がりましたけれども、さすがに復旧工事が一巡して減ってきたということなので、こうした動向を見て、公共投資は「減少に転じている」というように判断を引き下げたところでございます。
次の話題に移る前に1つだけ申し上げておきたいのは、先ほど「足元の景気の特徴は、規模、それから地域の広がりがある」と申し上げましたが、実は道東もそれと同じことになっておりまして、2000年代のいざなみ景気のころは、赤い左側の丸で囲ったように全国に比べて道東地域の景況感は低調、すなわち「悪い超」であったので、残念ながら道東の景気は改善しているとは言えない状況にありました。一方で、2016年〜17年のところをご覧いただくと、「良い超」になっているということで、道東の景気も改善していまして、先ほどご覧いただいたとおり景気の改善が道東にも及んでいると言えると思います。
一方で、下のグラフを見ていただくと、これは「雇用人員判断DI」ということで、各企業に「人手が足りていますか」と伺って、マイナスになると「不足」とおっしゃっている企業がより多いということですけれども、人手不足感は全国よりも厳しい状況にあります。黒い太い線で示した道東が全国を示す点線よりも下にあるということから分かるとおり「不足だ」と言っている企業の割合は道東の方が多く、人手不足が深刻な問題になっております。
 次に話を課題に移したいと思いますけれども、まずは人口流出の問題です。2016年中の釧路市の人口流出入を男性と女性に分けて、しかも年齢別で、折れ線グラフが0よりも下側にあるとネットで人口流出ということになり、そうした年齢層の人達が釧路市から流出して減っているということになります。
特にご覧いただきたいのは男性・女性ともに、20歳〜29歳、30歳〜39歳、そして40歳〜49歳という年齢層が大きく下側に行っているということが分かるとおり、生産年齢人口が釧路市から、特に道内の他の都市に流出していることが目立ちます。皆様は「若い人が札幌へ移住してしまう」といったお話を聞いていらっしゃると思いますけれども、こういう数字を見てもそういうことを裏付けており、やはり人手不足の問題がより深刻なのは生産年齢人口の流出が影響していることがあると思います。
 次に工業・商業活動などが所得を創出する力を北海道の中で比較してみました。工業関連統計を使って従業員1人あたりの製造品出荷額等をみると、釧路は1人あたりの製造品出荷額等が全道平均よりも高く、札幌よりも高いですし、帯広よりも高いという状況でございます。これはやはり装置産業、紙パルプや化学関連の大企業の出先工場が釧路市内にありまして、その寄与が結構大きいと考えております。このため、従業員1人あたりの製造品出荷額や1人当たりの粗付加価値額は、釧路市は相対的に高いということになります。例えば、製造業の1人あたり粗付加価値額については、スライドに書かせていただいたとおり、全道平均が883万円なのに対して釧路市は1,555万円ということで、釧路市の方が高くなっております。従って、やっぱり重要なことは、最近「出先工場が道内から撤退してしまう」とかそういう報道が目を引きますが、大企業の出先工場を地元に引き留めることは、結構大事なことだということがこうした数字から分かると思います。
ただ一方で、課題として商業関連統計を見てみると、1人あたりの年間商品販売額を右側のグラフに示しましたが、やっぱり札幌は非常に高いです。それと比べると釧路や帯広といった道東の都市は見劣りしています。これ実は、私ども日銀の道内支店が取引先金融機関に対し支払いや受取りを行う現金の流れを見ているとよく分かります。釧路支店は現金の「払い超」になっています。つまり、釧路で住民が現金を引き出して持って行き、日銀札幌支店は大きな「受超」になっています。これは、何が起こっているかというと、釧路でお金を引き出して札幌に移動して買い物をすると、日銀札幌支店は現金の受超になるという傾向になります。釧路に住んでいる人が実際にお金を使っているところは札幌といった違う都市になってしまっていることが、こういう結果につながっているのではないかと思います。いま釧路市役所や釧路商工会議所が中心になって、観光を振興し、観光客に釧路市内でお金を使ってもらおうということをやっていらっしゃいますが、そのように、いかにお金を釧路管内で使っていただくかということに取り組んで行くのは、恐らく釧路市内での1人あたりの年間商品販売額を上げるのには必要なのだろうと思っているところでございます。
 最後に、これで締め括りますが、申し上げたかったのは、企業や商店が廃業することを何とか止めて行けないかと考えているところでございます。最近、金融機関が積極的に事業承継に力を入れていることは1つ大事なことだと思っております。先ほど労働生産性を上げないとマイナス成長になりますという話をご紹介申し上げましたが、生産性の観点からもこれは大事でございまして、有用な技術や従業員が生産性の高い企業へと円滑に移転して行けば、経済全体としても労働生産性の向上に繋がりますし、廃業してしまって有用な技術が失われたり、長期の失業によって従業員の能力や技術が低下すれば経済全体の労働生産性が低下してしまうということになりますので、企業が持っている有用な経営資源が、円滑に後継者や他の企業によって承継され、生かされることが大事であると申し上げて、私の本日のお話しを締め括りたいと思います。
どうもご清聴ありがとうございました。


閉会・点鐘
その他の報告
ニコニコ献金
お名前(敬称略)内     容
邵 龍珍3月に入りました。あと4ケ月、何卒よろしくお願い申し上げます。
山田 健NHK釧路放送局は、おかげさまで今週26日(月)に開局80周年を迎えました。今後ともよろしくお願いいたします。
今年度累計 673,500円