第05回 2011-2012年度例会報告

 2011年 08月 04日(木曜日)通算 3180回

会長の時間

会長挨拶 五明 正吉

8月に入りまして、釧路らしい非常に良い天気が続いております。この1週間、アメリカの借金上限問題や円高問題、中国の胎児カプセルとか、世界中で色々なことが起こっておりますけれども、本日は非常にプログラムが立て込んでおり、そのようなことを話す余裕がないということです。よって1つだけお話しをさせていただきます。
 先日8月1日に、皆様にお話しをしておりました通り、全国のガバナー会に災害の見舞金が届いております。その中から6、7、8分区に約1,000万円弱のお金が災害見舞金として届きました。そのような中で7分区には322万円が配分された訳でございます。その配分をどのようにするかということについてガバナー補佐を通じて色々お話ししました結果、そのうちの40万円は白糠ロータリーさんへ渡すことになりました。そして今日の新聞にも載っておりましたが、白糠ロータリーさんは町へ寄贈するということにしました。残りの釧路市内の7クラブの合計金額が282万円、これは8月1日に吉田ガバナー補佐をはじめ各クラブの会長が釧路市蝦名市長のもとにお届けをしました。その際に市から各クラブに感謝状が贈られております。
 これをもちまして会長挨拶を終わらせていただきます。どうもありがとうございます。

本日のプログラム

釧路の子供たちの基礎学力問題について 

釧路教育活性化会議・代表、釧路の教育を考える会・副代表
三木 克敏(北海道労務サポートオフィス代表 釧路西RC)

 皆さんこんにちは。本日はお招きいただきましてありがとうございます。釧路教育活性化会議・代表、釧路の教育を考える会・副代表の三木と申します。

 実は私、ロータリアンでございまして、釧路西ロータリークラブで前年度幹事を努めさせていただきました。釧路クラブさんには、昨年の第一例会での表敬訪問に出席させていただき、本日で2度目でございます。また6月に実施させていただきましたIMにつきまして、川島前年度ガバナー補佐以下、釧路西ロータリークラブ会員一同に成り代わりましてお礼を申し上げます。ありがとうございました。また、尾越直前会長、舟木直前幹事には、本当に良くしていただき、この場をお借りしましてお礼を申し上げます。ありがとうございました。

 さて、本日は「釧路の子供たちの基礎学力問題」と題してお話しを進めさせていただきたいと思います。この手のお話を申し上げますと、中には拒否反応を示す方がいらっしゃいます。「たかが子供の勉強じゃないか。子供は元気に外で遊んでいればいいんだよ」といったご意見です。実は私もそう思うのです。職業分類・社会保険労務士ということでロータリーに在籍させていただいておりますが、学習塾講師を振り出しにしてかれこれ20年以上、私教育の世界に携わって参りました。現在は光陽町にて、株式会社情熱空間・明光義塾釧路愛国教室という個別指導の学習塾を経営しております。この仕事に就くまでは私自身「学習塾など必要悪に過ぎない」そう思っておりました。
今現在、全国一斉学力テストというものが実施されております。平成22年度の結果ですが、47都道府県の中にあって我が北海道は小学校6年生が47位、中学3年生が43位という結果でした。また道内の結果ですが、道教委、北海道教育委員会の発表値によるとトップは札幌市・石狩地区、次いで旭川市・上川地区、次に帯広市・十勝地区、空知地区、そして函館市・渡島地区です。概ね都市の人口規模に学力が比例している傾向が見て取れます。となりますと人口順は札幌、旭川、函館、そして釧路、苫小牧、帯広ですから釧路は上位に位置しても良さそうなのですが、残念ながら小学校6年生、中学校3年生とも国語、算数・数学の全分野に於きまして、4年連続で全国平均おろか全道平均を下回っております。
さて、「基礎学力」という言葉はなかなか曖昧な用語です。人によって何を以て基礎学力と定義するのかはまちまちです。ただ一般的に我々が考える基礎学力とは、実は小学校4年終了相当の学力を意味します。このようなことを言いますと、「そんな学力は当たり前だろう」と言われるのですが、当たり前ではない状況が残念ながら釧路、根室に於きまして起こっております。
毎年中学3年生を対象に全道一斉に行われる学力試験があります。9、10、11月に実施され、それぞれを学力総合A、B、Cといっています。この試験結果が進路指導の基礎資料になるわけです。試験は5科目各60点満点で合計が300点満点になります。釧路の平均点は110~120点程度です。全日制の道内公立高校の入試当日の平均点は180点弱になるのですが、高校入試は3月ですから時期的なものを少し加味して考えますと点数が低くなりますので、同時期の全道平均は150~160点程度と推測されます。釧路の子供たちの学力について特に顕著なのが数学の点数の低さです。60点満点なのですけれども、平均10点台の学校が多くあります。決してこの試験問題が難しいのではありません。計算問題がありまして、その計算問題が全問正答出来たなら20点が取れる試験なのです。それから例えば簡単な文章題がありまして、文章題が解けないけれども式を途中まで書いただけで点数がもらえます。また簡単な角度計算が出来れば30点に届く試験なのです。ところが残念ながらそこに届かない。ちなみに高校では赤点というのがあります。通常赤点は30点未満です。これを60点満点に換算すると18点ということになりますので、釧路の子供たちの多くは算数、数学の力が「赤点」ということになろうかと思います。道内には4つの高専が置かれております。不況に強いといわれ高倍率をキープしている状況にあるものの、数学がこういった状況にあるので釧路高専に関しましては倍率が上がらず、なんと今年の入試に於きましては定員割れという状況になっております。
道内最大の模擬試験を実施している北海道学力コンクール事務局というのがございまして、そこが発表する偏差値によりますと、釧路の子供たちの学力は十勝に大きく水をあけられています。皆様の頃であれば釧路湖陵普通科=帯広柏葉、釧路江南=帯広三条、北陽=帯広緑陽、そのような感じだったと思います。ところが最近、湖陵の理数科が低下傾向にあり、逆に帯広柏葉が伸びていますので、追いついてきている状況。それから今や帯広三条がほとんど湖陵の普通科と変わらないという状況です。そして江南が帯広三番手の緑陽とほとんど同じくらいという状況になっております。
一方、社会保険労務士として経営者の方からこのような声もよく耳にします。「現場に積み上げられたダンボール箱の数を数えられない」つまり縦×横×高さの計算が出来ない。接客業に於いて「敬語が正しく使えずにお客さんに不快な思いをさせた」。販売の現場において「消費税の計算が出来ない」「言われた簡単な会社の名前を漢字で書けず、領収証が切れない」「誤字脱字だらけなのであまりにも恥ずかしい」といったことです。
次に、札幌商工会議所が主催している社会人を対象にした基礎学力講座に「社長さんもため息、『訃報』を『トホウ』と読む若者」といったものがありました。ただ私に言わせると、まだまだまだまだ甘いなと思うのです。釧路での状況はもっと深刻です。一例を挙げますと、この度の東日本大震災、本当に大変なことでしたけれども、その際に「日本赤十字社を通じて義援金を」といったアナウンスが何度も何度もありました。ところが釧路の子供たちの中には、「赤十字」というのを「アカジュウジ」と呼んでしまう子が少なくないのです。
また、自動車学校での話を例に挙げますと、自動車免許を取りにきても学科試験になかなか受からない。場合によっては4回、5回受けてやっとクリアする子が増えているそうです。何故そうなるのか。本人は決してふざけているわけではないのです。真面目にサボらずにきちんと受講している。実は設問の意味自体がよく分からないのです。これが先ほど申し上げました小学校4年生の文章読解力が身についていないという状況なのです。先ほどの学力テストの結果につきましても、小学校4年生終了時点の読み書き計算の力がきちんと身についているのであれば、平均点が110点や120点となることはないのです。
皆様の近くに小学校高学年のお子さん、または中学生でも良いです。高校生でも良いと思います。会社の若い社員でもかまいません。こういうことをさせてみて下さい。1から2倍ずつしていきます。1・2・4・8・16・32・64・128・256・512・1024です。11回目で1024になるわけです。今の釧路の中学生あたりで10秒以内に1024の答えにたどり着ける子、つまりまともな暗算が出来る子というのはせいぜい2割弱くらいだと思います。今の逆、1024から2で割ってと言ったらほとんどできません。これがどういうことか。実社会に出たら消費税の計算というのは絶対に絡みます。例えば「1,000円の商品があります。2割引で販売すると、その商品の税込価格はいくらですか?」といった場合に、即答出来る子は多分、釧路の中学校の2年生ならばクラスで数人だと思います。
これまで子供たちの勉強について話して参りましたが、実は我々が最も大きな危機感を抱くのは、学校生活のその先のことなのです。今年3月末時点で就職を希望する新規高卒生は釧路管内に603名いました。ところがそのうち146名、実に4人に1人の高校3年生が就職先未定のまま卒業を迎えたとのことです。経営者の方からこのようなお話をお聞きします。私より皆様の方が思い当たる節がおありではないでしょうか。「せっかく採用したのにすぐに辞めてしまう。研修期間中に辞めてしまう者すらいる」「簡単な資格の取得を命じたものの、それを取得出来ない」「一般常識がなくて話が通じない」「基礎学力が低すぎて仕事が覚えられない」そのような類いのもの。「地元釧路のためと思い新規高卒生を雇ったものの、まるで使い物にならない」「中途採用の方が確実だ」「以後、新規の高卒生は採用しない」と言ったご意見です。
さて近年盛んに「負の連鎖、世代をまたいだ格差の固定」といった問題がテレビで報じられるようになりました。今お話し申し上げたことですが、これは釧路・根室のみの問題ではなくもはや全道・全国的な問題です。しかし、私の知るところでは釧路に於いては少なくとも10年・20年前も今も同じ状況です。斜に構えた物言いだと思いますが「釧路・根室の状況が時を経て全道・全国に広がっただけだ」そのようにすら思っています。
さて基礎学力問題の核心です。学校生活というのは単なる通過点に過ぎません。子供たちには実社会に於いての実生活が近い将来に待っています。そこで求められるのは、良質な労働力を持った若者です。地域社会を川に例えるならば、学校生活・学校教育というのは川の上流であり、そして地域社会の現実は川の下流です。長引く不況に雇用不安、伸び続ける生活保護受給率。それが下流域の現実です。しかしその部分をマクロな視点で見たならば、地元の子供たちの基礎学力低下がさらなる拍車を掛けているという事実を否定できません。低迷する地域経済の問題にしろ、根本にはこの問題が横たわっているということです。つまり地域経済を何とかしたいと思ったら、マンパワーたる子供たちの基礎学力問題を切り離しては根本的な解決にはつながらないということです。
これは児童虐待の問題についても然りです。精神的に未熟な親が引き起こす場合が大半で、多くは不安定な経済状態と不規則な生活習慣というものが根底にあるわけで、正しい生活習慣の形成と基礎学力の有無というものが密接な関係にあるということが、研究者によっても指摘されている部分でもあります。

 さて、嘆いてばかりいても始まりません。冒頭に申し上げました「釧路の教育を考える会」についてです。これは元の教育長でいらっしゃる角田憲治さんを会長として、釧路市議会議員・現職教員・退職校長・大学教員・複数の経済団体・市役所幹部職員・私塾関係者等によって結成した組織です。また、会員でもある議員の尽力によりまして、「釧路市議会基礎学力問題研究議員連盟」が立ち上がるに至りました。現在私ども、釧路の教育を考える会のメンバーが講師となりまして、釧路に於けるこのした学校教育の問題点を広く知っていただこうと活動を続けております。
また、ごく近い将来になりますが、釧路市・釧路市教育委員会・北海道教育委員会及び関係諸機関に対して提言書を提出し、その実現を強く求めていくことを予定しております。「小学校から補習をして下さい」とずっと訴え続けてきました。この夏、釧路市立の小学校、全28校に於きまして、一斉補習というのが開催されました。今後夏冬のみならずこういった動きが普段から行われるようになれば、本日申し上げたようなことも徐々に改善の方向へと向かうものと思います。企業が求める人材像を正しく教育現場に伝える。そのために教育行政への橋渡しをする。そのした仕組みを築きたいと思っています。思うに経済界の要望を学校教育の場に正しく伝え、その要望を反映する仕組みを構築するという試みは、全国初のものと言ってもよいものかと思います。しかしそのためには、ぜひ皆様のお力添えが必要です。釧路の子供たちの明るい未来の為に、この街の将来の発展のために、皆様のご協力を重ねてお願いする次第です。
ご静聴、ありがとうございました。

ニコニコ献金     合計 230,000円

川合 隆俊  
木村 豊年  
濱  孝之 釧路湿原マラソンに参加し完走しました
関向 一  

(敬称略)
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